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2020注目選手その2 エレナ・リバキナ(Elena Rybakina)

二人目の注目選手はこちらも20才のエレナ・リバキナです。

 

これは、普段からツアーを見ている人であればもうお馴染みの選手でしょう。

このリバキナですが昨年から驚異的なスピードで世界ランクを上げていることでも注目されています。

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去年だけで一気にトップ100どころか30台までランクを上げ、更に今年も既に17位までランクを上げています。

 

さらに今年に入ってからも4大会で決勝に進出し、うち1回優勝。破れた相手もバーティ、ベルテンス、ハレプ、アレクサンドロバであり、いずれも実力者です。

 

つまり、一定以上の実力の選手以外にはほぼ負けない安定感があるといえるでしょう。

まだ若いのに安定感があるというのは驚異的です。

 

では、リバキナの強さをスタッツを通して検証してみましょう。

 

○スタッツ検証

 

まずはリターンスタッツから。

 

               2019      2020

1st Return Points Won     38.3%→36.3% 

2nd Return Points Won    56.5%→53.8%

Break Points Lost                   43.6%→35.1%

Return games Won                 37.5%→33.6%

 

グラフにするとこうなります。

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全体的に昨年に比べて数値が下がっています。(※Break Points Lostはブレークポイントを落とす割合なので少ないほうが良い指標です。)

 

○スタッツ悪化の理由

ではリターンゲームでのパフォーマンスが下がっているかというと、そうではないと考えられます。

その理由は去年の急激なランク上昇です。

 

去年の序盤のリバキナの世界ランクは前述の通り175位でした。

出場できる大会も下部大会であり、対戦相手のランキングも100以下がほとんどです。

つまり、去年のスタッツには下部大会での結果も含まれていることになります

 

それに比べて今年のリバキナはWTAの本戦にストレートインできるだけのランクでシーズンをスタートしているため、当然スタッツも本戦に出場するような高ランクの相手に対して残したものが記録されます

ということは、当然としてスタッツも悪化することが予測できます。

 

ここから、上記グラフにあるようなスタッツの悪化は

 対戦相手の実力上昇によるものであり、リバキナのパフォーマンス低下によるものではない

と考えることが妥当と考えられます。

 

○リターンスタッツはトップグループでは中の下

では、2020のスタッツはどのくらいの能力なのか、2019年の他選手のスタッツと比較することで考えてみます。

 

エリナ。リバキナ(2020

1st Return Points Won     36.3% 

2nd Return Points Won    53.8%

 

2019年にこれと類似したスタッツを残した選手は、上位に限るとこの二人。

 

キキ・ベルテンス(2019)

1st Return Points Won     36.4% 

2nd Return Points Won    53.8%

 

ペトラ・クビトバ(2019)

1st Return Points Won     36.2% 

2nd Return Points Won    54.3%

 

なお、上位に限らなければ、このくらいのスタッツはランク30~50周辺には割と多く散見されます。(ベキッチ、クデルメトバまたはピーターソンなど多数)

 

ベルテンス、クビトバに共通するのは強力なサーブを持っているということです。

ともに1st Serve Points Wonが70%を超えています。

 

逆に言えば、このレベルのリターンスタッツの選手はサービスゲームで優位性を持たなければ上位に進めないということでもあります。

 

では次にサービススタッツを確認してみましょう。

 

 

○安定したサービスゲームの秘密

 

               2019      2020

1st Serve in                         58.4%→60.2%

1st Serve Points Won            68.2%→69.6% 

2nd Serve Points Won           50.2%→52.5%

Service games Won               73.7%→79.0%

 

グラフにすると

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サーブスタッツは対戦相手のレベル上昇にも関わらず、いずれも去年から伸びています。

好調の鍵はサービスゲームということですね

 

先程の二人と比較してみましょう。

 

キキ・ベルテンス(2019)

 

1st Serve in                         57.3%

1st Serve Points Won     72.1%  

2nd Serve Points Won    47.1%

 

ペトラ・クビトバ(2019)

1st Serve in                         60.8%

1st Serve Points Won     71.3% 

2nd Serve Points Won    49.8%

 

この二人と比較しても、1stでのポイント獲得率は下回るものの、1st成功率が60%を超えるためほぼ同程度と考えてよいでしょう。

そして、2ndでのポイント獲得率では完全に上回っています。

 

特に、2ndでのポイント獲得率52.2%は、昨年のトップ50の誰よりも高い数値です。(2位はバーティの51.4%)

 

ここから、今季のリバキナのサービスゲームの強さには2ndサーブでのポイント取りの上手さが影響していると考えられそうです。

 

以上をまとめると、今季のリバキナは

「平均レベルのサービススタッツと1stサーブスタッツを有し、2ndサーブのポイント獲得率でアドバンテージを奪っている」

と言えるでしょう。

 

 

○今後の見どころ

リバキナはこのままの調子でも昨シーズンのベルテンス並みの成績を残すことは十分考えられます。

 

課題とされていたトップ10勝率の低さも、先週のドバイでケニン、プリスコバに勝利したことで改善の兆しを見せています。

 

今後改善が見込まれそうな点は、1stサーブでのポイントの取り方になると思います。

 

以下は2019年のトップ10と今年のリバキナの1stサーブが入る確率とポイント確率をかけた数字のグラフです

 

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ご覧の通り、リバキナは1stサーブの確率と取得率のバランスが高い方ではありません。

 

この中ではプリスコバが少し抜けているとして、ハレプとケニンは確率を上げて行くスタイル、セリーナと大坂は確率よりも獲得率を上げていくスタイルで数値を伸ばしています。

 

リバキアは身長もあり、早いサーブを打てるパワーもあるので、少し確率を落としてでもポイント獲得率を高める方向性がいいのかなと個人的には思います。

 

その理由として、

①2ndでのポイント獲得率が高く、1stでショートポイントを狙いにいける土台がある。

②エースの数も一試合あたり5.7本と多い部類である。

点が挙げられます。

 

2ndが安定していれば1stでリスクを負いやすくなりますし、エースを打てるポテンシャルがあればプレースメントを意識することでポイント獲得率を上げやすいと考えられるからです。

 

 

総じてリバキナは20才という若さにしてバランスの良い選手と言えます。

今年に入ってからは勝ち進むことが多く、過酷な日程となるシーンも多いですが、それでも体力的・精神的にタフに戦い抜けてもいます。

 

今後の目標はグランドスラムでの成績向上ですが、この調子で行けば上位進出も十分考えられますし、なにより今急速に力をつけている選手なのでどのように成長していくのか、今年注目していきたい選手といえると思います。

 

連戦の疲労の中でハレプ相手にここまで食い下がったのは見事でした!

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