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2021 ウィンブルドン女子シングルス展望

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雨天による順延があったために、少し変則日程となっている今年のウィンブルドン

 

三日目にしてようやく全選手の初戦が終了したので、女子シングルスの展望について考えてみたいと思います。

 

例によって全ての試合を見ることはできていないので、スタッツや過去成績から判断している点も多いですがご容赦ください。

 

 

まず、今年のウィンブルドンの特記事項をまとめます。

 

①2年ぶりの開催

 

 昨年はウィンブルドン、ひいてはグラスシーズンがほぼスキップされていたため、多くの選手にとっては久しぶりの芝でのプレーになっています。

  

 そのため、ここ最近の間に頭角を表してきた若手選手や、他のサーフェスを主戦場とする選手などは対応に苦慮する可能性があります。

 

 ただし、後述するように今年のウィンブルドンの芝は例年と比べて、滑る(主としてセンターコート)・遅い・ストロークがしやすいなどの声が挙がっているので、これまでグラスコートを得意としてきた選手にも対応の難しさがあると思われます。

 

 以上の事由により、世界ランクやシードでは予想がつきにくい展開になると考えられます。

 

②例年より短い調整期間

 

今年のスケジュールは全仏OPからウィンブルドンまでの期間が近年よりも1週間短くなっています

 

そのため、全仏OPを終盤まで勝ち残った選手の多くは、グラスコートの大会に出場することなくぶっつけ本番の形でウィンブルドンに出場しています。

 

更に上記①の事情も重なることで、上位ランカーや実績のある選手であっても芝対策が万全でない可能性があるため、注意が必要でしょう。

 

③芝の違い

 

今大会では初日から芝のコンディションについての言及が多く見られます。

 

屋根を閉めたセンターコートではマナリノ、セリーナなどのグラスコート巧者が転倒による負傷で棄権を余儀なくされていますし、他のトップ選手もバランスを崩している光景が散見されます。

 

 

ただ、センターコートの滑りやすいという問題は大会側の声明にもあるように試合数が増えるにつれて解消されていくと思います。

 

 

もう一つの聞かれる意見として、今年の芝は球足が遅いというものです。

キリオスが下の記事で言及しています。

 

www.bbc.com

www.theguardian.com

 

また、NHKの解説で坂井さんからも、「選手からストロークがしやすいという声が聞こえる」と言った情報が伝えられました。

 

このような意見があるとしても、それがどの程度試合結果に影響するかは不明です。

 

 

参考までに2019年と今大会のここまでのニューボール関係値を載せておきます。

 

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これを見る限り、ブレーク確率やボールの影響に例年との差は少ないと考えられます。

 

ただ、勝ち残る選手のプレースタイルの傾向に違いがでる可能性もあるので注意したいところです。

 

 

以上を踏まえ、ドローを見ながら展望を考えていきたいと思います。

 

 

○トップハーフ

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○トップハーフの上の山

 

波乱が起きやすいグラスコートということもあり、非常に展望の読みにくい女子シングルス。

 

それでも、中心は第1シードのバーティになると思います。

しかし、不安要素もあります。

一つは前哨戦に出場していないため、今年のグラスコートの試合数が少ないことによる調整不足

もう一つは、全仏で故障した部位を含めたコンディションです。

3Rのvandeweghe/シニアコバはどちらも前哨戦でいい動きをしていた選手なので、個々が最初の関門になるかと思います。

QFレベルでも前哨戦で好調だったオスタペンコ・カサツキナ・アザレンカ・コルネといったメンバーと対することになるため、簡単なドローではありません。

万全のプレーが出来ればバーティが筆頭とは思いますが、今名前を上げたメンバーならば誰がSFに進んでも驚かないドローにはなっていると思います。

 

 

全仏覇者のクレイチコバに関しては、そもそもグラスコートでの試合がキャリアを通じて少なく、また前哨戦もスキップしているため未知数です。

深く安定したストロークに、ダブルスもこなすボレー能力はどちらもグラスコートで武器になるとも感じますが、情報が乏しく判断が難しいです。

3Rでのコストゥク/セバストワを突破してくるようだと、勝ち上がりも見えてくるでしょう。

 

個人的な注目はオスタペンコです。

前週優勝ということで、体力的にも上位に勝ち進むのは厳しいかもしれませんが、その爆発力でドローを荒らす可能性は大いにあると感じています。

 

 

 

○トップハーフ下の山

 

ここで注目されるのはケルバーでしょうか。

グラスコートを得意としウィンブルドンの優勝経験もあるケルバー。今年も前哨戦で優勝しグラスコートでの変わらぬ強さを示しています。

 

ケルバーの不安要素は体力面です。

前哨戦での勝ち残りに加えて体力的にタフなドローが続きます。

 

2Rのトルモは長いラリーが多い粘り強い選手で、長い試合になれば体力の消耗は避けられません。

さらに、4Rではガウフ又はベンチッチを下したJuvanという若手選手との対戦が予想されます。前哨戦からの連戦でコンディションが落ちることがあれば、この4Rは難関になると予想されます。

QFレベルの対戦相手はスビトリーナ、ジョルジ、ムホバ、パブリュチェンコなどが有力でしょうか。

ただ、スビトリーナ・ムホバは芝での勝率が高い選手ではありませんし、ジョルジは芝で力を発揮する選手ではあるものの安定感に不安がある選手で、パブリュチェンコバは全仏からの切り替えに不安があります。

 

可能性としてはケルバーorガウフ/Juvanが高いような気がしています。

 

個人的な注目は上記にも書いたJuvan(ユバン?)です。

グラスコートを得意としているベンチッチの早いショットにもしっかり対応していました。

勝ち上がりという点では経験が足らないため難しいかもしれませんが、ガウフとの若手対決となればかなり楽しみです。

 

 

○ボトムハーフ

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○ボトムハーフ上の山

 

ボトムハーフに関して2Rがほとんど終了しています。

 

ここまでいい形で勝ち上がっているのはKa.プリスコバキーズだと思います。

どちらも強力な1stサーブを持っており、グラスコートの特徴を使って優位性を保てています。

 

プリスコバに関しては個々最近のGSで序盤ではいいプレーをしながらも、劣勢を跳ね返せずに中盤であっさりと敗退してしまう展開が続いています。

多くはメンタル面の問題と考えられるので、どこかで自信を取り戻すことが出来れば能力的にはSF、Fに残っても遜色ありません。

毎回Ka.プリスコバに注目していると書いている身としては、そろそろ大きな活躍を期待したいところです笑

 

キーズは前哨戦から良いサービスゲームを展開しており、3Rのメルテンスをクリア出来るようなら、4Rのゴルビッチ/ブレングルがタフマッチを経験していることを考えると、QF、SFが見えてきそうです。

 

個人的な注目はサムソノワです。

ベルリンの決勝でベンチッチを破って優勝している選手で、今シーズンのグラスコートではサービスゲームにおいて強力なサーブ・ストロークを展開しています。

2Rのペグラ戦でも1stサーブポイント獲得率が81%と高い数値を残しています。

 

今大会ではベルリンに比べるとミスが多い印象があるものの、3Rでスティーブンスの守備を突破してくるようだと波乱を起こす可能性がある選手だと思います。

 

 

 

○ボトムハーフ下の山

個人的にこの山が一番激戦区だと感じています。

 

グラス巧者のジャバー、強力なサーブ・ショットのあるリバキナ、優勝経験のあるムグルサが中心になるでしょうか。

ジャバーとムグルサが3Rで当たってしまうのが勿体ないですね。

 

サバレンカシフィオンテクといった若手選手も危険な存在ですが、グラスコートとの相性を考えると一歩下がる印象です。

サバレンカは1R、2R共にまだUFEが多く見られるなど少し安定感を欠いていますし、シフィオンテクはインタビューでもグラスコートへの対応に困っていることを明かしています(もちろん本音ではない可能性も高いですが)。

ただ、グラスコートは試合が進むにつれて芝が禿げていくため、それによってプレーが改善されている可能性もあるので、試合ごとに注視が必要だと思います。

 

個人的な注目はOsorio Serranoです。

予選からの勝ち上がりの選手ですが、サービスゲームに不安のある選手なのでアレクサンドロバは厳しいかなと感じていましたが見事勝利、3Rではサバレンカに挑みます。

非常に勝負強い印象のある選手なので、サバレンカのミスを引き出すことができれば競った試合も視野に入ると思います。

 

 

○終わりに

 

今大会はそうでなくとも展望の読みづらい女子シングルスにおいて、2年ぶりの芝・調整期間の短さ・芝の状態変化疑惑という要素が加わることで、非常に難しい局面ができてしまっているように思います。

 

以上、少し頼りない展望となってしまいましたが、楽しい観戦の手助けとなれば幸いです。