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ソフィア・ケニン(sofia kenin)は次のナンバーワンとなるか?

今年の全豪を制したニューヒロイン。

「ソフィア・ケニン」

絶対女王が不在の女子ツアーにおいて、アメリカの21歳がナンバーワンになることができるのか、去年と今年のデータ、そして全豪の試合内容を踏まえて考えたいと思います。

 

まずは、去年から今年の現在(2/6)までの主要スタッツの変化を見てみます 。

 

○サーブ系

                   2019      2020

1st Serve Won     66.2%→67.4%  

2nd Serve Won    48%   →52.3%

Break Points Saved  60%   →68.1%

Service games Won    74.2%→80.7%

 

見事に全ての数値が向上しています。特に2nd Serve WonとBreak points Saveの数値は去年のランキングであれば全体一位の数値。

特に2ndサーブで5割を超えるポイント獲得率を残せているのは大きい。

上背もなく(170cm)サービスの速度も早くない(むしろ遅い部類)タイプでの5割超えは素晴らしい。

というか、1stの確率が7割なので、セカンドのほうがポイントが獲得できていることになるな、すごいぞケニン。

ちなみに全豪での2ndのポイント獲得率は、5本未満のラリーの場合は低く、5本以上ラリーが続いた場合が高いです。

2ndでも長いラリーに持ち込めばポイントが取れているということになるケニン。

そのためにはウィナー級のリターンを打たれないことが大事。それをケニンは2ndの速度の変化で対処していますように見えます。

 

全豪決勝のサーブの平均速度をみると、     

                  1stサーブ平均速度  2ndサーブ平均速度

ケニン    153km        144km

ムグルサ   160km           138km

 

となり、1stと2ndで逆転しています。

これは準々決勝のジャバー戦でも同様です。

そして、この平均速度も安定して140km台を打つのではなく、150km台のダブルファーストに近いものから120km台の回転系のものなど速度の変化を大きくしています

これによって、ウィナー級のリターンを打たれにくい2ndを実現し、得意の長いラリーに持ち込むことが出来ていると考えられます。

 

 

続いてリターンゲームのスタッツを見てみると、

 

○リターン系

                          2019      2020

1st Return Points Won     33.4%→32.2%  

2nd Return Points Won    57.5%→55.2%

Break Points Converted        45.4%→47.5%

Return games Won                  34.3%→32.2%

 

リターンスタッツは下がっています。

しかし、これは分母が少ない中でバーティ、ムグルサ、ジャバー、ガウフ、大坂などサーブが強みの選手と当たっていたわけなので、むしろこの程度の微減に収まっていれば昨年と同レベルもしくは昨年以上あると考えることもできるしょう。

 

 

以上をまとめると、今年のケニンは

「昨年と同程度のリターンゲームのクオリティを維持しつつ、サービスゲームのクオリティを上げた」

と言えるでしょう。

 

ではケニンはこのテニスでナンバーワンとなれるでしょうか。

これを前回の記事の内容を用いて考えてみます。

tennisandlespen.hatenablog.com

前回の分析での仮説として、「安定したリターン力が今季のトレンドである」と書きました。

ではケニンのリターン力はどうでしょう。

ケニンの今季のリターンの成績のトップ10内での順位をカッコで示します。

                          2020

1st Return Points Won     32.2% (8位)

2nd Return Points Won    55.2%(6位)

Break Points Converted        47.5%(4位)

Return games Won                  32.2%(6位)

 

リターンは相手によるところも大きいので、シーズン初めの10試合程度では確実とは言えませんが、少なくとも圧倒的なリターンスタッツではありません。

となると、サーブの調子が悪いor組み立てを読まれて叩かれる、という局面が増えていくとケニンが安定して勝ち続けることは難しいというマイナスの予想が見えてきます。

 

一方、全豪のデータを見るとケニンはサービスゲーム、リターンゲームを問わず長いラリー戦で髙いポイント獲得率を誇っていることから、サーブ不調でもとりあえずラリーにさえ持ち込めばなんとかなる、というスーパーラリーモードに入っている限りは勝ち続けるかもしれません。

ただ、長いラリー頼みとなるとどうしても体力の問題にぶち当たるため、一年を通して安定して勝ち続けられるかは少し疑問です。

 

以上をまとめた私の意見は、

「現在の力のケニンでは安定したナンバーワンとはならない」

といことにさせていただきたいと思います。

 

個人的には、こういう強いメンタリティの選手は好きなんだけれど、そういう選手が勝ち続けるかっていうと難しいよね。

もう少しフリーポイントが増えれば化けそうな気もするし、何よりメンタルの方向性が完成されているのが強み。

まだ若いので、これからの変化にも注目していきたい選手ですね。