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2020注目選手その3 コリ・ガウフ(Cori Gauff)

ハッピー・バースデイCoco。

 

というわけで、3人目の注目選手は、彗星のごとく現れた若きニュークイーン候補、

コリ・ガウフ(愛称ココ)です。

あまりにも注目されてしまったのでちょっと避けていたのですが、2ndsetの分析をしてみて、やはりガウフは外せないなと感じたので、遅ればせながら書いていきたいと思います。

 

tennisandlespen.hatenablog.com

 

今日が誕生日で16才になったガウフですが、昨年はリンツで15才6ヶ月25日という若さで優勝したことで一気に注目度が上がりました。

 

日本人からすると、全豪オープン3回戦で大坂なおみに勝利したことが記憶に新しいかと思います。

昨年全米で大坂と対戦したときには、大坂の1stサーブとストロークの威力に押される場面が目立っており、力負け、という印象だったので、勝つのはもう少し先になるかと思っていたのですが、(大坂が崩れてしまった側面があるとはいえ)まさか数ヶ月で勝利するとは思いませんでした。

 

 

では、ガウフとはどのような選手なのか、強さの理由はどこにあるのか、データを見ながら考えていきたいと思います。

 

 

 

○イン率よりも獲得率

まず、サービススタッツから見ていきます。

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昨年からの変化でみると、1stサーブのイン率のみが減少、その他の各サーブのポイント獲得率とサービスゲーム獲得率は上昇となっています。

 

ちなみに1試合あたりのダブルフォルト数も昨年の4.75本から6本に増えています。

 

ということは、1stと2ndどちらのサービスにおいても、イン率が下がっているのに対しポイント獲得率はどちらも上昇しているということになります。

 

つまりガウフは、サーブにおいては確実に入れることよりも、ポイント獲得率を上げるという作戦をとっている可能性が高いといえます。

 

ここで、対大坂なおみの1stサーブポイント獲得率を昨年の全米と今年の全豪で比較してみると、昨年はわずか42%だったのに対し今年は76%と大きく数字を伸ばしており、上記のような作戦をとっていたとするなら、それは成功していたと言えるでしょう。

 

○高速2ndサーブ

もうひとつ、全豪でのガウフのデータで面白いのは2ndサービスの平均速度です。

 

以下は今年の全豪における大坂とガウフの1st及び2ndの平均速度をグラフにしたものです。

 

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この二人の選手に共通するのは、ともに1stの速度が速いこと。

アベレージ170kmを超えてくる選手は女子では貴重な存在です。

全豪でも、カロリーナプリスコバやリバキナなど一部の選手だけが記録しています。

 

そんな強力な1stを持つ二人ですが、2ndの速度を見るとなんとガウフが大坂を20km以上も上回っています

これは大坂の2ndが1stの割に遅いということもありますが、もそもガウフが速すぎです

女子選手であれば1stの平均速度が150ということもよくあることなので、対戦相手からすれば、いつもの試合であれば1stサーブレベルの速度の2ndサーブが飛んでくる、ということなのでリターン側へのプレッシャーも相当なものであると考えられます。

 

もちろんサービスは速度が全てではないですが、実際に2ndサーブのポイント獲得率が昨年よりも上昇しているので、ガウフにとっては速度がプラスに働いていると考えられます。

 

○課題も見えるリターンゲーム

以上の順調な成長を見せているサービスとは裏腹にリターンスタッツは少し落ちています。

 

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もちろん、今季はまだサンプル数が少ないことに加え、相手のレベルも初めからツアーレベルであることは無視できないと思います。

ただ、リターンゲームの獲得率25%は少し悪すぎです。

 

WTA全体の位置づけを前回作成した散布図で確認してみます。

tennisandlespen.hatenablog.com

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右下の赤丸が2020ガウフですが、サービスゲームは一躍トップグループの仲間入りを果たしたものの、リターンゲーム獲得率は最低クラスになっています。

 

今後はリターンゲームでのアプローチをどうするかがガウフの課題となりそうです。

 

 

全豪での大坂戦では、相手の2ndを攻撃することで勝利を掴みましたが、続くケニン戦では好調ケニンにロングラリーに持ち込まれ、なかなか優位に立つことができずに敗戦となりました。

 

甘い2ndをしっかり攻撃する能力はリターンゲームにおいて重要な能力なので、それが上達していそうなのは良い傾向と言えます。

また、ケニンには通じなかったものの、ガウフは決してロングラリーに弱い選手ではありません。

足が速いためコートカバーリング能力も広く、組み立ての中からネットに出るポイントの獲得率も高いです。

 

今後は1stサーブに対する2球目のリターンをよりディフェンシブに打てるようになれば、リターンスタッツも向上してくるようにも思います。

 

○まとめ

現在はまだリターンに弱さがある選手ですが、16才にして既にそれくらいしかわかりやすい弱点がないともいえます。恐ろしい。

 

よく野球では速い球を投げることと遠くへ飛ばすことは才能だ、と言われることがあります。

テニスにおいては速いサービスを打つことが才能だ、と言えるように思います。

ガウフは女子選手の中では貴重な強力なサービスを持っている選手で、それだけでスペシャルな才能を有しているといって良いでしょう。

 

16才にして強力なサービス力と、安定した技術を見せるガウフ。

 

彼女が今年、そしてその先にどのようなテニスを見せてくれるのか、1テニスファンとしてどうしても大きな期待をしてしまうのでした。